最近では広い年齢層の多くの人たちがSNSを利用し、ビジネスに活用している企業も増えてきていますが、一方でSNSでの嫌がらせで事件に発展するようなトラブルも増えてきています。
SNSでの誹謗中傷や嫌がらせは、「相手が匿名のために誰だか分からずどういった対処をすればいいかわからない」と泣き寝入りしてしまう人や誰にも相談できずに悩んでしまう人がほとんどでしょう。
しかし、きちんとSNSの嫌がらせについての知識をつけ、適切に対処すれば嫌がらせの相手を特定し、法的措置を取ることも可能なのです。
今回は、SNSやインターネットでの嫌がらせをする相手を特定するために必要な事やポイント、手順について詳しく解説していきます。
インターネット上での誹謗中傷は、一昔前から2ちゃんねるなどのネット掲示板を中心に問題視され、たびたびニュースなどでも取り上げられていました。
最近ではネット掲示板よりもTwitterやInstagramなどのSNSや、YouTubeなどのコメント欄での嫌がらせや誹謗中傷が大きな問題になり深刻化しています。
SNSで嫌がらせや誹謗中傷をする際、ほとんどの加害者が自分の本名を明かすことはないので、わざわざフリーメールアドレスを使って「捨てアカウント」を作成していて、「匿名だから何を言ってもバレないし、訴えられることもないだろう」と考え、過激な嫌がらせに発展してしまうのです。
SNSで嫌がらせをする加害者は匿名で投稿していたり、捨てアカウントを使っていたりするので、どうやって犯人を特定していいかわからず泣き寝入りする人が多いでしょう。
しかし、匿名アカウントでも捨てアカウントでも、投稿に利用された『IPアドレス』の記録をたどれば加害者を特定していくことができます。
なお、IPアドレスとは、パソコンやスマホなど個々の機器に振り分けられた識別番号のことです。
投稿に利用されたIPアドレスから、IPアドレスを管理するインターネットプロバイダを特定し、特定できたインターネットプロバイダに、IPアドレスを利用した人物の契約者情報の開示を求めることで、SNSで嫌がらせをした犯人の身元が特定できるという仕組みです。
嫌がらせをした加害者が責任を追及されるのを恐れて自分のアカウントを消してしまうこともあります。
SNSの運営会社は削除されたアカウントの情報も一定期間は保管していますが、アカウントが削除されてしまうと、「いつ」「どのアカウントから」「どのような嫌がらせの投稿があったか」という証拠が取れなくなってしまう可能性があります。
これらの証拠は、SNSの運営会社に対してIPアドレスの開示を請求する際に必要になりますので、アカウントが削除されてしまう前に、嫌がらせの投稿内容のスクショやアカウントの記録などの情報を入手しておくことが重要です。
嫌がらせの投稿内容のスクショやアカウントの情報を取っておいたとしても、犯人を特定するためにはできるだけ早く行動を起こすことが最重要になります。
なぜなら、SNSの運営会社がIPアドレスの記録を保管するのは3か月程度で、その保管期間を過ぎてしまうと記録が削除されてしまうからです。
SNSで嫌がらせを受けた際は、早い段階で弁護士や探偵などネットトラブルの専門家に相談することが大切です。
SNSで嫌がらせを受けたり誹謗中傷されたりした場合、加害者を特定するために「発信者情報開示請求」をする必要があります。
ここでは発信者情報開示請求とは一体何なのか、どういう流れで行うのか、期間はどのくらいかかるのかについて詳しく解説していきます。
発信者情報開示請求とは、ネット上で嫌がらせや誹謗中傷などの被害を受けた人が、プロバイダやサイト運営者、SNS運営者などに対して、加害者である投稿者に関する情報の開示を求めることです。
発信者情報開示請求によって得られる情報は、発信者の氏名や住所、メールアドレスなどです。
加害者を特定できないと嫌がらせを受けた被害者は加害者に対して慰謝料請求などの法的措置をとることができないので、法的責任を問いたい場合は発信者情報開示請求は必要不可欠になります。
発信者情報開示請求をする流れとしては、
1:SNSの運営会社へIPアドレスの開示を請求する
↓
2:IPアドレスから加害者が利用したプロバイダを特定する
↓
3:プロバイダへ契約者の情報開示請求をする
↓
4:加害者を特定する
という流れになります。
ただ、SNSの運営会社に開示を拒まれてしまう可能性もあります。そうなると、強制的に情報開示させる必要が出てきて、裁判所で「仮処分」という手続きをしなければならなくなります。
仮処分が必要になると、個人で行うのはかなりハードルが高くなりますので、法律の専門家である弁護士に相談するのがベストでしょう。
発信者情報開示請求は、裁判所の手続きが必要になりますので、犯人を特定できるまでにはある程度の時間が必要になります。
目安としては、IPアドレス開示請求に1~2か月、契約者情報開示請求に3か月ほどかかります。さらに、GoogleやTwitterなど海外会社に対して行う場合はさらに時間がかかってしまいますので、注意してください。
発信者情報開示請求は、裁判所の手続きが必要になるケースがほとんどなので、自力で行うことは相当ハードルが高いと言えます。
もちろん、裁判所の手続き自体は個人でもできなくはありませんが、開示を求めるための正当な理由について法的に認められる客観的な証拠や書類の作成が必要になりますので、法律の専門知識なく行うのは難しいでしょう。
そのため、SNSで嫌がらせを受け、その加害者を特定したい場合は専門家に相談するのが最も効率がいいのです。
SNS上の投稿によって社会的、経済的な信用が損なわれた場合や投稿内容が脅迫めいていて生命や身体に危害が加えられるおそれがある場合などは警察に相談しましょう。
緊急性があると判断されれば刑事事件として捜査し、犯人を特定してくれるよう動いてくれます。
ただし、警察の捜査はあくまで刑事事件としてなので、慰謝料請求や損害賠償など民事として訴えていきたい場合は対応してもらえませんので注意してください。
嫌がらせの加害者を特定し、嫌がらせの投稿の削除依頼をしたい場合や、損害賠償や慰謝料請求などの民事的な措置を取りたい場合は弁護士へ相談するのがいいでしょう。
SNSの嫌がらせの犯人を特定するうえで、探偵への相談も有効です。
探偵というと、浮気調査がメインの仕事と思われがちですが、中には嫌がらせ被害の調査やネットトラブルに関する調査に力を入れている事務所もあります。
法的措置を取りたくても嫌がらせ被害の証拠が掴めず、弁護士でも対応してもらえないという場合などは証拠集めのための調査を任せることができるので、心強い味方になってくれるでしょう。
SNSで酷い嫌がらせを受けた場合、犯人を特定するだけでなく、相手に対して慰謝料請求したいと考える方も多いと思います。
では、SNSの嫌がらせに対してはいくらくらい請求できるのでしょうか。
被害状況によって慰謝料の金額は変わってきますので、一概には言えない部分もありますが、一般的な相場としては以下のようになります。
名誉毀損に該当する場合(個人が請求) : 10~50万円
名誉毀損に該当する場合(会社や法人が請求) : 50~100万円
侮辱罪に該当する場合 : 1~10万円
プライバシー侵害に該当する場合 : 10~50万円
そもそも嫌がらせの内容が侮辱罪にあたるのか、名誉毀損にあたるのかなどについても自分自身では判断が難しいですし、被害状況によっても金額が変わりますので、詳しくは弁護士や探偵に相談してアドバイスをもらうのがいいですね。
匿名のアカウントや捨てアカウントでの嫌がらせであっても、SNSの運営者がIPアドレスを保管している限り、加害者の特定は可能です。
自分だけでは犯人の特定ができなくても、探偵や弁護士など専門家の手を借りれば犯人を特定して法的措置を取ることもできるのです。
ただ、犯人特定のために必要なIPアドレスは保管期間が限られているので、嫌がらせ被害を受けたら素早い対応をすることが重要になります。
一人で悩まず、まずは気軽に専門家に相談してみましょう。