プロバイダー大手のBIGLOBEが実施したある調査によると、SNSを利用している20~60歳代の男女合わせて770名のうち、17.5%の人が「SNSで他者から誹謗中傷されたことがある」と回答しています。
SNSを含めたネット上の嫌がらせは今に始まったことではありませんが、コロナで自粛疲れやストレスが溜まってSNSでストレス発散のために誹謗中傷する人が増えているのでしょう。
そして、SNSなどネットの嫌がらせ被害は個人が受けるだけでなく、企業もその被害対象になることが増えています。企業がSNS上のトラブルに巻き込まれてしまうと企業イメージの低下や業績悪化を招いてしまうのは避けられません。
今回は、SNSなどのネットで嫌がらせを受けた場合の対処法や無料の相談先、そして嫌がらせの加害者を訴えたい場合に警察や弁護士に相談するのが有効かどうかについてお伝えしていきます。
SNSやインターネット掲示板などでの誹謗中傷の被害は増え続けています。
総務省が発表した「SNS上での誹謗中傷への対策に関する取組の大枠について」によると、令和元年には1,985件のインターネットにおける人権侵害事件が発生していて、この相談件数は、相談の受付を開始した平成22年度の相談件数の約4倍に増加しているのです。
ネットでの嫌がらせに苦しんでいるのは個人だけではなく、企業がネットで誹謗中傷を受けてしまうとそれがあっという間に拡散されてしまって企業イメージの低下を招き、回復にかなりの時間と労力を使ってしまうことになるでしょう。
誹謗中傷のトラブルは昔からありましたが、現代の誹謗中傷トラブルの件数はその比ではなく、とくにSNSにおいて多発しています。
では、なぜSNSで誹謗中傷が多発しているのでしょうか?
SNSでの誹謗中傷が多いのは、インターネット特有の匿名性にあると言えます。
SNSの多くは本名ではないアカウント名で登録や投稿が可能なので、「誹謗中傷をしてもバレない」という心理が働いて、誹謗中傷を誘発させているのです。
SNSの世界観は独特で、現実世界とは少し異なっています。
そして、SNSの世界で間違った正義感を持ってしまう人もいて、「世の中の間違いを正してやる」「この人の不正を暴いてやる」などという間違った正義感から誹謗中傷の投稿につながってしまいます。
そのため、実際には誹謗中傷の書き込みなのにも関わらず、本人は正しいことをしていると思い込んでいます。
SNSを含めインターネット上のやり取りは相手の顔や声がわかりません。そのため、相手が傷ついているのか、怒っているのかもわからず、誹謗中傷が加速してしまいがちです。
誹謗中傷を受けた相手が自殺を考えるほどに追い込まれていても、その様子がわからず気持ちを汲み取れないため、誹謗中傷がなくならないのです。
SNSで多くの人が誹謗中傷をしていると、「みんなもやっているから」と、自分も誹謗中傷に加担してしまいやすくなります。いわゆる集団心理が働きやすくなり、罪の意識を感じにくくなってしまうのです。
実際に、SNSで誹謗中傷をする人たちは「悪気はなかった」「そこまでの罪悪感はない」と感じていることが多いのです。
SNSなどネットで誹謗中傷の被害を受けた場合、どのように対処していけばいいのでしょうか。ここでは主に3つの対処法についてご紹介していきます。どの対処法を選ぶべきかは、状況や希望する解決によって異なりますので、状況に合わせて決めていきましょう。
嫌がらせの書き込みをした加害者に対して刑事責任を問い、訴えたい場合は、警察に被害届を出して刑事事件にするという対処法があります。
これは、書き込みの悪質性が高く、ネットの書き込みが犯罪行為にあたると警察が判断できるような場合に可能な対処法です。
被害届を出し警察に受理してもらうためには、被害を受けた証拠を用意して警察に持参する必要があります。警察が認めてくれる証拠は素人ではなかなか抑えられないこともありますので、その際はネット嫌がらせ調査を得意とする探偵に相談するといいでしょう。
刑事責任を問う以外に、民事責任を追及して加害者に損害賠償請求するという対処法もあります。発信者情報開示請求の手続きを利用して、相手を特定し、損害賠償請求という方法をとるのです。
なお、発信者情報開示請求に必要となるサイト側に残された発信者の情報は、通常3ヶ月程度で消されると言われていますので、情報が消失するまでにできるだけ早く投稿者の特定をする必要があります。
損害賠償請求の手続きについては弁護士に相談するのが安心でしょう。
参考記事:発信者情報開示請求して誹謗中傷投稿者を特定しよう!流れとポイント
嫌がらせの加害者に対して刑事告訴や損害賠償請求など法的措置を取らないけれど、嫌がらせの書き込みは何とか消したい!という場合は、SNS管理会社やサイト管理者に要請して嫌がらせの内容の書き込みの削除依頼をするという方法があります。
サイトに設置された問い合わせフォームを使って、削除依頼をする方法もありますし、送信防止措置依頼という方法で削除依頼をするという方法もあります。後者の場合は弁護士に依頼したほうがスムーズにできるでしょう。
通常、TwitterやInstagramなどのSNSでは個人に対する嫌がらせや攻撃的な投稿は規約違反となりますので、削除の対象となります。
ネットやSNSで誹謗中傷を受けた時、どのように対処していいのか、何から始めていいのか、法的措置を取るくらいのレベルのものなのか、わからないことだらけで不安になってしまうでしょう。
いきなり警察や弁護士に相談するのはハードルが高いと感じてしまうかもしれません。
そんなときは、ネットやSNSでの嫌がらせの相談を受け付けている無料相談窓口を活用してみることをお勧めします。
法務省が設置しているインターネット人権相談受付窓口は無料で嫌がらせの相談をすることができます。相談フォームに氏名・住所・年齢・相談内容などを入力して送信すると、最寄りの法務局から後日メールや電話でアドバイスをしてもらえます。
ご相談はこちらのページから行ってください。
警察署が設置しているサイバー犯罪相談窓口でも、ネットやSNSでの嫌がらせについてメールや電話で相談を受け付けています。
地域ごとに分かれていますので、こちらのページから確認してみてください。
インターネット企業有志によって運営されている一般社団法人セーファーインターネット協会でも誹謗中傷の相談を受け付けています。
また、こちらが開設している誹謗中傷ホットラインでは国内外のプロバイダーに対して削除対応を促す通知をおこなっていますので、サイトやSNSの利用規約に従って削除ができそうなケースではこちらへ相談することでスムーズに解決できる可能性が高いです。
インターネット上の嫌がらせに限らず、嫌がらせ被害を受けた時、警察に相談することを考える方も多いのではないでしょうか。
しかし、ネットやSNSで嫌がらせ受けていると警察に相談しても、警察は基本的には動いてくれません。
確かに、誹謗中傷をしてきた嫌がらせの加害者に対して名誉毀損などの刑事責任を問う場合は警察への相談が必要になってきますが、その際には被害内容が名誉毀損にあたることの決定的な証拠や加害者を特定する証拠が必要になります。
そもそも、警察は原則として民事トラブルの解決には協力しないということが決められているため、民事トラブルが大部分を占めるSNS上の嫌がらせはには介入できず、多くの場合警察に相談しても具体的な対応は望めないのです。
そのため、加害者に対して刑事責任を問いたいという場合以外は、民事事件として捉えて対応を考えていくほうが現実的と言えるでしょう。その場合は弁護士や探偵への相談が有効になります。
ネットやSNSでの誹謗中傷に対して警察はなかなか動いてくれないということは先ほどの章でお伝えしました。ネットで嫌がらせを受け、法的措置を考えている場合や根本的な解決を希望する場合は、弁護士への相談が有効です。
ここでは、誹謗中傷被害を弁護士に相談する場合に知っておくべき知識をまとめていきます。
弁護士に誹謗中傷被害を相談した場合、主に
・削除請求
・発信者情報開示請求
・損害賠償請求
の解決手段を取ってくれます。
削除請求は個人でもできますが、サイトによっては削除請求を受け入れてくれないケースも多いため、弁護士が被害者の代理人となってプライバシーポリシーを正確に解釈したうえで削除請求をします。
弁護士が請求すれば、サイト管理者が削除に応じてくれる可能性は高くなります。
発信者情報開示請求は、サイト管理者にIPアドレスの開示請求とプロバイダーに対する発信者情報の開示請求を行う手続きで、この手続きを行うことで嫌がらせの加害者が匿名の場合であっても、個人の特定が可能になります。
加害者が特定できれば裁判所に訴えて損害賠償を請求することができるようになります。
これらの手続き法的知識が必要になってくるため、弁護士に依頼するのがお勧めです。
慰謝料請求の手続き自体は弁護士に依頼すればいいのですが、慰謝料請求が裁判で認められるためには誹謗中傷を受けたという被害の確固たる証拠が必要になります。
そして、そのような証拠は弁護士が取るということは難しいので、ご自身で集めるか、探偵に調査を依頼することになります。ただし、法的に有効と認められる被害の証拠は素人だとなかなか難しいため、探偵に調査を依頼するのがベストでしょう。
損害賠償請求や発信者情報開示請求に必要となる証拠ついてはネットトラブルに強い探偵に依頼することがお勧めです。
SNSなどネット上で誹謗中傷された場合、慰謝料はどのくらい認められるのでしょうか?誹謗中傷は名誉毀損として慰謝料を請求できますが、慰謝料の金額については、事業者なのか一般人なのかによっても変わってきますし、有名人かどうかでも変わってきます。
一般人への名誉毀損については10~50万円、事業者への名誉毀損については50~100万円が相場となっています。
なお、名誉毀損の慰謝料は、影響が大きいかどうかで金額に差が出てきます。たとえば、相手が事業者や有名人の場合には、一般人より大きな損失が発生するので賠償金が上がりやすくなります。なお、有名人への名誉毀損は400万円以上になる可能性もあります。
実際にSNSで誹謗中傷された場合、どのくらいの慰謝料を請求できるのかを知りたい場合は、弁護士に相談してみるのが確実です。
SNSなどのネットで誹謗中傷を受けていて、精神的な苦痛が酷かったり企業イメージの低下で苦しんでいたりするのであれば、我慢し続ける必要はありません。
SNSでの嫌がらせはあっという間に拡散されて被害が大きくなってしまうリスクもあります。ひとたび拡散されてしまった情報は簡単には収束させるのは困難なので、すぐに投稿の削除や加害者の特定といった対処を取るべきです。
ネットの嫌がらせのせいで会社の業績が悪化することは絶対に避けるべきなので、被害を受けたことが判明したらできるだけ早く弁護士や探偵に相談するのがお勧めです。