皆さんは嫌がらせをされたことがありますか?
もしくは、誰かに嫌がらせをしてしまったことがありますか?
嫌がらせをされた側も、してしまった側も、「嫌がらせをしたらどんな罪になるのだろう?」というのは気になるところではないでしょうか。
嫌がらせをされた側は相手を訴えて罰則を与えたいと思うでしょうし、嫌がらせをしてしまった側はどのような罪に問われるのか気になると思います。
今回は、嫌がらせをしたときにどのような罪に問われるのか具体的な罰則についてや、逮捕される可能性のある嫌がらせ行為にはどのようなものがあるのかについて、詳しく見ていきましょう。さらに、あなたが嫌がらせの加害者側の場合も被害者側の場合も、どのように対処するのがベストなのかも解説していきます。
自分自身は軽い気持ちでしてしまったことも、相手にとっては精神的苦痛と伴う重大な嫌がらせと受け取ってしまうことも多々あります。
そして、相手から訴えられた場合、嫌がらせの内容によっては犯罪に該当し、犯罪として逮捕されてしまう可能性もあります。
ここでは、犯罪として逮捕される可能性がある嫌がらせ行為について具体例を見ながら解説していきます。
よくテレビドラマなどで、アパートやマンションの掲示板や、公共のエリアの掲示板に侮辱的なことが書かれた貼り紙をされるという嫌がらせシーンがありますが、この嫌がらせは犯罪に該当する可能性が高いです。
「●●号室の〇〇さんは社内で不倫をしている」「〇〇さんの息子は人を殴って少年院に入れられている」などという貼り紙をするような行為が犯罪に該当します。
アパートやマンション、公共エリアの掲示板は、不特定多数の人の目に触れる状態ですので、そこの場で、社会的な名誉を傷つけたり、侮辱的なことを書いていたりすると、名誉毀損罪や侮辱罪などの犯罪で訴えられる可能性があります。
最寄りの駅で待ち伏せする、道中後ろからずっとついて歩く、などのつきまとい行為は立派な迷惑行為ですが、内容や頻度によってはストーカー規制法違反として処罰の対象になる可能性があります。
相手が嫌がっているにも関わらず、相手への一方的な恋愛感情や好意によって特定の相手につきまとう行為は、ストーカー規制法の対象になりますので、逮捕される可能性があります。
無言電話を受けたことがある方はおわかりいただけるかと思いますが、無言電話は受け取る側にとってはかなり恐怖を感じる行為です。無言電話をしている側は軽い気持ちなのでしょうが、相手に与えるダメージは相当なものなので犯罪として訴えられる可能性があります。
なお、無言電話などの嫌がらせ電話は個人だけでなく企業に対して行われる場合も犯罪に該当する可能性があります。
嫌がらせの電話としては、無言電話以外に脅迫電話、悪質なクレーム電話などが挙げられます。
何罪に該当するかは嫌がらせ電話の内容や相手が個人か企業かでも変わってきますし相手がどのような被害を受けたのかによっても異なります。
例えば、個人のスマホに繰り返し交際を求めるような電話を繰り返す場合はストーカー規制法違反になりますし、企業の電話に「〇〇の販売を辞めろ。さもなくば会社を燃やしてやる」などの脅しのような電話を繰り返しかけていれば脅迫罪や業務妨害罪に該当する可能性があります。
他にも、カスタマーサービスのコールセンターに何度も悪質なクレームを入れて、オペレーターを脅すような行為をして精神的苦痛を与えている場合は、業務妨害罪や脅迫罪などに該当するでしょう。
先ほどの章で、逮捕される可能性のある嫌がらせ行為についてご紹介しました。
ここでは嫌がらせ行為をすることによってどのような罪に問われる可能性があるのか、逮捕された場合どのような罰則があるのかについて具体的に見ていきたいと思います。
名誉毀損罪は公然と事実を摘示して他人の名誉を毀損した場合に成立する犯罪です。ここでいう「事実」は真実であるのか嘘であるのかは関係ありませんので、仮に根拠のない噂や嘘であっても名誉毀損罪が成立する場合があります。
また、「公然と」とは、不特定多数の者が直接に認識できる状態を意味しています。
例えば、マンションやアパートの掲示板に「●●号室の○○さんは社内不倫をしている」などという嫌がらせの貼り紙をしたり、ウェブ上などでのネット掲示板やSNSに「●●会社の部長は賄賂を大量に受け取っている」などと書き込んだりした場合に名誉毀損罪となる可能性があります。
名誉毀損罪と判断されれば3年以下の懲役または禁錮または50万円以下の罰金が科される可能性があります。なお、名誉毀損罪は親告罪なので被害者から刑事告訴されない限り罪に問われることはありません。
名誉毀損罪と似ているものとして侮辱罪があります。侮辱罪は事実を摘示しないで公然と人を侮辱した場合に成立する罪です。
名誉毀損罪と混同してしまいやすいのですが、侮辱罪に該当するものの例としては大勢の人々の前で「●●は馬鹿だ」「●●は役立たずだ」などとののしると侮辱罪に該当する可能性があります。
侮辱罪となれば拘留または科料の対象になります。こちらも名誉毀損罪と同様、親告罪なので被害者から刑事告訴されない限り罪に問われることはありません。
業務妨害罪は虚偽の内容を広めるなどして他人の経済的な活動を妨害したときに成立する犯罪です。
個人に対してだけでなく、被害者が経営する会社や店舗に対しても成立します。
業務妨害罪に該当する可能性のあるものとしては、「〇〇店のお弁当は腐ったものを使っている」「〇〇会社の化粧品は粗悪な素材を使っているから買わないほうが良い」などとネット掲示板に書き込みをしたり、SNSなどに「○○会社ではセクハラとパワハラが横行している」などの虚偽の投稿をしたりする場合が挙げられます。
また、会社や飲食店に1日に何度も電話をかけて脅しともとれるようなクレームを繰り返した場合も業務妨害罪が成立する可能性がります。
業務妨害罪となれば3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
住居侵入罪は他人の住居や敷地内に許可なく侵入した場合に成立する罪です。嫌がらせの貼り紙を玄関に貼り付けたり、ターゲットの車を傷つけたり、敷地内にゴミをばら撒いたりなどの嫌がらせ行為は、ターゲットの敷地内に入って行われる場合がほとんどです。そのため、住居侵入罪は嫌がらせの多くのケースで適用される犯罪なのです。
住居侵入罪になれば3年以下の懲役または10万円以下の罰金に処せられます。
窃盗罪は、他人の所有物をわざと持ち去ったり勝手に使用したりする際に成立する罪です。
嫌がらせ行為として洗濯物を盗んだり、自転車を勝手に持ち出したりする事案も多いので窃盗罪は嫌がらせ行為に対して適用されることの多い罪の1つです。
窃盗罪と判断されれば10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
器物損壊罪は他人が所有しているものを壊したり傷つけたりした場合に成立します。ここでいう「もの」にはペットなどの動物も入ります。
車やバイク、自転車を壊したり、ポストをこじ開けたり、ペットにいたずらをして傷つけたりした場合に器物損壊罪に問われます。
器物損壊罪の罰則は3年以下の懲役または30万円以下の罰金です。
脅迫罪は相手本人や相手の親族の生命、身体、自由、名誉または財産に対して危害を加えることを告知して人を脅迫した場合に成立します。これはリアルな世界で嫌がらせの手紙や貼り紙をした場合であってもネット上の書き込みや投稿であっても成立します。
ちなみに、嫌がらせ行為に対して相手本人が恐怖を感じなかったとしても、一般人が恐怖を感じる程度の告知があれば脅迫罪が成立します。
脅迫罪が成立するのは生命、身体、自由、名誉、財産の5種類に対する害悪の告知で、具体例としては以下のような告知が脅迫罪に該当します。
・「殺すぞ」「生きていられると思うな」 → 生命に対する害悪の告知
・「殴るぞ」「腕をへし折ってやる」 → 身体への害悪の告知
・「子供を誘拐してやる」「働き続けられると思うなよ」 → 行動の自由への害悪の告知
・「写真をネットにばらまくぞ」「不倫をバラしてやる」 → 名誉に対する害悪の告知
・「家を燃やしてやる」「車をぶっ壊すぞ」 → 財産への害悪の告知
脅迫罪が成立すれば2年以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
ストーカー規制法は2000年に施行された比較的新しい法律で、一方的な恋愛感情や好意を満たすためにつきまといなどのストーカー行為をすることを規制しています。
ストーカー規制法が禁止している行為は、つきまとい、待ち伏せ、うろつき、監視していると告げる行為、面会や交際の要求、繰り返し電話をかけるなどが挙げられます。
ストーカー規制法違反になった場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられますし、さらに、裁判所から「つきまとい行為を止めるように」と禁止命令が出ていたにも関わらずそれを破ってつきまとい行為を続けた場合は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金の対象となります。
ここまでは刑事上の犯罪について見てきましたが、刑事上の責任追及がされなかった場合でも民法上の責任追及として損害賠償請求を受ける可能性もあります。
損害賠償請求で支払いを命じられる金額は被害の内容や状況によっても変わってきますが、大体の相場は以下のようになります。
個人に対する名誉棄損 : 10万円~50万円
企業に対する名誉棄損 : 50万円~100万円
侮辱 : 1万円~10万円
プライバシー侵害 : 10万円~50万円
他にも実際に物を壊した場合にその賠償金額が上乗せされたり、加害者の特定にかかったお金の一部が上乗せされたりする場合もあります。
ここまでで、嫌がらせ行為に対して、状況によってどのような罪に問われるのかを見てきましたが、実際に嫌がらせ行為をされた場合や嫌がらせ行為をしてしまった場合、どのように対応すればいいのでしょうか。
ここでは、被害者側、加害者側それぞれについて適切な対応方法についてご紹介していきます。
あなたやあなたの大切な人が嫌がらせ行為の被害者となってしまった場合は、犯人に対して損害賠償請求や刑事告訴を考えていくと思いますが、何よりもまずすべきなのは、加害者の特定とその証拠集めです。
損害賠償請求も刑事告訴も、相手からの謝罪も、犯人が誰かわかっていなければどうしようもありません。さらに、裁判で犯人であることや被害を受けていたことを認めてもらわなければならないので、法的にも認められるような客観的な証拠が必要です。
そのため、嫌がらせ行為の被害者になった場合は、嫌がらせ調査を専門としている探偵に相談し、しっかりと証拠を取って法的措置を取ることを考えていくのがベストでしょう。
反対に、あなたが嫌がらせの加害者になってしまった場合はどうすればいいのでしょうか。嫌がらせ行為をするつもりでなくても、ネットやSNSなどについ強めのことを書き込んでしまい名誉毀損罪で訴えられてしまうというケースは近年特に増えていますので、決して他人事ではないでしょう。
もし嫌がらせ行為で訴えられてしまった場合や、訴えられそうだと感じた場合は、できるだけ早く弁護士に相談して対策を考えていくのがお勧めです。
刑事告訴されて起訴されてしまったら前科がついてしまいます。そうなれば今後の就職や結婚などにも大きな影響を与えてしまうことになりますので、弁護士に相談して被害者と示談を成立させることで、たとえ逮捕されても最終的に不起訴処分できる可能性を高めることができます。
なお、もし法的に訴えられるまでに猶予がありそうな場合は、しっかりと謝罪をしたうえで自分自身で相手と交渉して和解するという方法も考えられます。
相手との交渉については、それなりの法的知識や交渉力が必要になってきます。当事務所でも交渉のポイントをアドバイスするというサービスをご用意しておりますので、こちらのサイト【問題解決のための交渉コンサルティング】も参考にしてみてください。
つい普段のストレスから嫌がらせの手紙を送ってしまったり、ネット掲示板に誹謗中傷を書き込んだり、クレームの電話を必要以上に繰り返してしまったりなど、罪に問われる可能性のある嫌がらせ行為をしてしまうこともあるかもしれません。
今回ご紹介したように、こうした嫌がらせ行為はその内容によって脅迫罪、名誉毀損罪、業務妨害罪、ストーカー規制法違反などの罪に問われる可能性があります。
また、嫌がらせ行為を受けている側も、早めに対処していかなければ嫌がらせ行為が繰り返される恐れもありますし、さらにエスカレートするリスクもあります。
嫌がらせ行為をしてしまった側も、されてしまっている側も、トラブルを解決するためにはできるだけ早く専門家に相談し、適切に対処していくようにしてください。