カテゴリ:指紋鑑定
「指紋鑑定」と聞くと、ドラマなどで殺人事件の現場で犯人の残した指紋を採取して犯人特定につなげる・・・など大袈裟なものを想像してしまう方も多いかと思います。
しかし、実際には、嫌がらせの手紙を送ってくる犯人を特定したり、盗難事件の犯人を捜したりなど、身近なトラブルの解決に使われることが多いのです。
嫌がらせの犯人を特定するためには、さまざまな調査の方法がありますし、いろいろな証拠を揃えることで可能になりますが、「指紋」はその人だけが持っている証明書のようなものなので、指紋鑑定で出た結果は言い逃れのできない確固たる証拠として使うことができます。
極端に言えば、小さな状況証拠を10集めるよりも、指紋鑑定の証拠1つ集めるほうが威力があるということです。
今回は、そんな指紋鑑定について、実際にどのようなトラブルの解決に使われているのか、指紋鑑定にはどのようなステップが必要なのか、指紋鑑定はどのような業者に依頼すればいいのかについて、詳しくお伝えしていきます。
指紋鑑定するかどうか迷っている方や、指紋鑑定についてよくわからず不安を抱えている方はぜひ参考にしていただけると幸いです。
指紋鑑定は当事務所でも多くのご依頼を受ける案件の一つです。
「警察に相談したけれど取り合ってくれない」「なかなか捜査を開始してくれないのでトラブルが解決できない」などの理由で指紋鑑定のご相談にいらっしゃる方も多いですし、大事にしたくないという理由で内密な捜査を希望される方もいらっしゃいます。
ただ、実際に指紋鑑定のご相談をお受けしている中で、「こんなことで指紋鑑定の相談をしていいのか悩んだのですが・・・」とおっしゃる方が多く、指紋鑑定をすることに躊躇してしまう方もいらっしゃいます。
指紋鑑定は大きな事件解決にももちろん役立ちますが、身近なトラブルを解決するための方法でもあります。そこでこの章では、これまで当事務所でお受けした案件の事例をもとに、指紋鑑定でトラブル解決に至ったものをいくつかご紹介していきます。
当事務所でお受けする指紋鑑定のご相談やご依頼の中で最も多いものが、嫌がらせの手紙を送ってくる犯人を特定したいというものです。
・自宅に怪文書のような手紙が送られてくる
・会社に差出人不明の嫌がらせの手紙がばら撒かれる
・取引先に会社の誹謗中傷が書かれたFAXが大量に送られているようだ
・嫌がらせの手紙の犯人の想像はついているが証拠がない
・経営しているお店に嫌がらせの紙が貼られる
などの事案です。
嫌がらせの手紙を送る犯人の目的は、誹謗中傷をして相手を精神的に痛めつけることだったり、社内の秩序を乱して楽しんでいたり、などなどさまざまですが、嫌がらせの手紙を送る犯人は粘着質である可能性が高いため、繰り返し嫌がらせをしてくる危険性があります。
嫌がらせの手紙が一度送られてくるだけならまだ我慢もできるかもしれませんが、何度も送られてきたり、職場まで巻き込まれたりすると、被害は甚大になってきますし、精神的な苦痛も計り知れないでしょう。
しかし、嫌がらせの手紙の案件は、警察に相談してもなかなか取り合ってもらえず、犯人の捜査はしてもらえないことがほとんどです。警察は慢性的な人手不足でより凶悪な事件に人員を割かなければいけない状況ですし、嫌がらせの手紙の事案は証拠を揃えることが難しいため、警察としてはあまり関わりたくない案件の一つなのです。
そのため、探偵などの調査会社に指紋鑑定を依頼することがトラブルを解決するうえで有効な手段なのです。嫌がらせの手紙や怪文書のような物的証拠がある場合、指紋鑑定を行うことで犯人を特定するための決定的な証拠が手に入りますので、より確実にトラブルを解決することができます。
また、案件としては多くはありませんが、何者かが自分になりすまして嫌がらせの手紙を送っているような場合、指紋鑑定を行うことで新たな真犯人を見つけることができますので、ご自身の身の潔白を晴らすことができる場合もあります。
関連記事:自分になりすました誰かが怪文書を送ってる⁉潔白を証明する方法とは
指紋鑑定のご相談で次に多いものが、窃盗被害を受けた方からのご相談です。
・会社内で現金が盗まれたので犯人を特定して処罰を加えたい
・社内窃盗が繰り返されるので犯人を解雇したいが証拠がない
・恋人の家に行くたびに現金がなくなっているが恋人が犯人かわからない
・自宅でたびたび紙幣が抜き取られている気がする。家族の誰が犯人か特定したい
このように、会社内や家庭内で起こっている窃盗の犯人を特定したいという案件が多いです。
窃盗事件というと、警察に相談して犯人を捕まえてもらうというイメージを持たれる方も多いかもしれませんが、実際には会社や家庭内で起こっている被害金額の少ない事件では、「警察沙汰にはしたくない」という希望を持っている方がかなり多いです。
警察が関与して、自宅に捜索に来てしまえば、家庭内で何か事件が起こったのかと近所中で噂されてしまいその後の生活がしにくくなってしまいますし、社内での窃盗の場合も、警察沙汰になってしまうと、会社のイメージダウンにつながる恐れも出てきます。
また、少額の窃盗事件の場合は、そもそも警察に相談しても刑事事件として取り扱ってくれないケースが多いというのが実情です。
このような場合、とりあえず窃盗の犯人を特定して、証拠をつかみ、何かしらの処罰を加えたりきつめに注意をしたりすることが解決を望んでいる方が多いのです。
指紋鑑定を行い犯人が特定できれば、警察沙汰になって周りや関係者から悪い印象を持たれずに済みますし、独自の方法でじっくり解決方法を検討していくことができます。
指紋鑑定をすることによって犯人を特定し、あらゆるトラブルを解決することができるということは繰り返しお伝えしていますが、なぜ指紋はそれほどまでの証拠能力があるのでしょうか。
ここでは、指紋に関する原則を確認し、指紋鑑定によって得られる証拠の威力を改めてみていきましょう。
指紋は一人一人違っていて、世界中のどこを探しても自分と同じ指紋を持っている人は存在しません。これについては多くの方がご存じなのではないでしょうか。
誰一人として同じ指紋の人間がいないことから、指紋が犯人であるという言い逃れできない証拠として使えるのです。この性質の正式名称は「万人不同の原則」と言います。
ちなみに人は左右合わせて10本の指がありますが、そのすべてが違う指紋となっています。そのため、指紋鑑定をする際は犯人であると想定される人物のすべての指の指紋を資料として用意しておくことが重要となります。
2つ目の指紋の原則は、生まれたときにもっていた指紋が死ぬまで一生変わることがないというものです。
子供から大人へと成長するにあたって、当然指のサイズは大きくなっていきますので、それと同時に指紋の大きさも大きく変わっていくのですが、指紋の模様自体は変わらずそのままの模様をキープしています。
指紋は線と線の間の間隔が同じになっていて、キレイな模様を描いています。指紋線の間隔は常に等しくなっているのです。
線と線の間隔が著しくバラバラになることも、指紋線が急激に細くなったり太くなったりすることもなく、きれいに整備されています。
人はどこかの皮膚が傷ついてしまっても、しばらくすると再生して元の状態に戻りますよね。指紋も同じで、皮膚の表面が傷ついたり、はがれたり、磨耗したりしても、しばらくするとまた同じ紋様が再生してきます。
ただし、表皮を破るほどの深い傷がつけられてしまった場合や、やけどなどで深い部分まで破壊された場合などは自然に指紋の模様が回復することが難しくなるケースもあります。
犯人が残した指紋がどのくらいの期間残されているか、気になりますよね。指紋がどのくらいの期間残っているかは、触った物によって違ってきます。
それは、そもそも指紋がなぜ検出できるのかに関係してきます。指で物を触った際、微量の汗が触った物に付着しますので、その汗に反応する薬品を使って指紋を見えるようにすることによって指紋を検出することができるのです。そのため、汗の成分が染み込みやすい素材なのかどうかによって指紋が残されている期間が変わってきます。
例えば、ガラスや鉄、ビニール、プラスチックなどは、屋内で保管されていれば、2~3ヶ月くらい残っていることが多いですし、コピー用紙や新聞紙などの紙類は約10年もの間、残っていることがあります。
指紋が消えてしまう原因となるのは、汗の水分が乾燥したり、油分が酸化したりすることや、紫外線によって色あせが起きるなどすると指紋が消滅してしまいます。
指紋鑑定をより正確に行うためには、指紋が消えてしまう前にできるだけ早く鑑定を依頼することと、指紋が消えないように証拠の物品を正しく保管しておくことが大切です。
指紋鑑定によって嫌がらせの犯人を特定することが可能になりますし、言い逃れのできない証拠として証拠能力が極めて高いものですが、指紋鑑定を行うためには、犯人が触っていて現場に残されていたものと、犯人と思われる人物の指紋の2つが必要になります。
嫌がらせの手紙のケースでいえば、手紙に残された指紋と犯人と思われる人物の指紋を照合することで、その人が犯人かどうかを判断するという流れになります。
ここでは、犯人と思われる人物の指紋をどのように採取していくのかについて見ていきましょう。
1つ目の採取の方法は、本人に告知することなく指紋を採取する方法です。具体的な方法としては、犯人と思われる人物が日常的に触っているようなコップやクリアファイル、書類などから指紋の検出を行っていきます。
この方法を使えば容疑者にバレることなく指紋を確保することができるのですが、採取した指紋の紋様が部分的だったり、擦れていて照合するのが困難だったり、というデメリットがあります。
秘匿採取で指紋を入手して指紋鑑定を行う場合は、1つの資料だけでなく複数の資料を用意して比較対照することによって指紋鑑定の成功率を高めることが必要になってくるでしょう。
ちなみに、「秘匿採取の方法で採取した指紋はちゃんと証拠として認めてもらえるの?」と心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、民事事件の場合、著しく違法なやり方での採取でなければ証拠として認められますのでご安心ください。
2つ目の指紋採取の方法は、容疑者の協力の元、指紋を取らせてもらうやり方です。指紋鑑定で使う専用の指紋の押印用紙に、任意で10本の指の指紋を取ります。
専用の用紙にしっかりと押印してもらうため、模様がしっかりと検出できますし、擦れて照合ができなくなることもありませんが、犯人と思われる人物の協力が得られなければこの方法での採取はできません。
先ほどの章でもお伝えしたように、指紋鑑定をするには、犯人が触ったと思われるもののほかに、犯人と思われる人物の指紋資料が必要です。
指紋採取の方法には、秘匿採取と任意採取があることはお伝えしましたが、現実的に考えて任意採取で指紋を取るのはかなり難しいでしょう。
「あなたが窃盗の犯人だと思うので指紋を取らせてほしい」と言っても素直に協力してくれる可能性はかなり低いですし、逆上されてさらなる嫌がらせをしてくる危険性すらあります。
かといって、秘匿採取の方法も素人の方ではなかなかはっきりと指紋が残されているものを入手するのは難しく、指紋鑑定がうまくいかない結果になる可能性も高いです。
そこでお勧めなのが、犯人の指紋を採取するところから指紋鑑定を請け負ってくれるプロに依頼するという方法です。指紋鑑定は、鑑定の専門業者か探偵などの調査会社に依頼することができますが、鑑定専門の業者では鑑定そのものはしてくれても指紋の採取まではしてもらえないことがほとんどです。
探偵であれば、指紋鑑定だけでなく、トラブル解決のための調査全般を受けてくれるので、犯人と思われる人物の指紋を採取する調査も行ってくれます。調査のプロが行う秘匿採取のため、犯人に怪しまれてしまうこともありませんし、指紋もはっきりと採取できる資料を確保してくれます。
指紋鑑定において、犯人の指紋を入手することが一番のネックになりやすいため、調査を最初から最後まで一貫して行ってくれる探偵に依頼するのがベストでしょう。
嫌がらせの犯人を特定するために、防犯カメラを設置したり、現場で見張ったりなどいろいろな方法が考えられますが、指紋鑑定は中でも証拠能力が高く、トラブル解決においてとても有効な方法と言えます。
嫌がらせは放っておいて自然に解決できるケースは少ないため、できるだけ早く犯人を特定してトラブルを解決していくことが大切です。また、嫌がらせを放置することで今後嫌がらせがエスカレートする可能性は否定できませんので、被害が大きくなる前に犯人を特定するのがお勧めです。
お一人で悩まず、ぜひ専門家に相談しながら嫌がらせを解決していってくださいね。