カテゴリ:嫌がらせ
自分としては軽い冗談のつもりや特に深く考えずにしてしまった行動でも、それが時に人を深く傷つけてしまうことがあります。
そして、あなたの取った行動が「嫌がらせ」として相手から訴えられてしまう可能性もあるのです。
実際、軽い気持ちでSNSに書き込んだ内容が他人の権利を侵害したとして、名誉毀損罪などの罪に問われてしまった事例は近年増加傾向にあります。嫌がらせの被害者になることも嫌がらせの加害者になってしまうことも、いつ誰に起こってもおかしくないのです。
今回は、訴えられる可能性のある嫌がらせ行為の事例や、嫌がらせを訴えられたらどんな責任が発生してしまうのか、万が一本当に訴えられそうになったらどのように対処していけばいいのかを解説していきます。
「嫌がらせ」と一言で言っても様々な行為が考えられます。法律的に訴えられる可能性のある行為にはどのようなものがあるのでしょう。
以下に訴えられる可能性のある嫌がらせについて見ていきます。誰もがついやってしまう可能性のあるものばかりだということがおわかりいただけるかと思います。
嫌いな相手やトラブルになっている相手に対して嫌がらせの手紙を送るという行為は法的に訴えられる可能性のある行為です。
また、直接手紙を送る以外にもマンションやアパートなどの公共の掲示板に嫌がらせの貼り紙をする行為も犯罪に該当する可能性が高いです。
企業やカスタマーサービスセンターに何度も何度もしつこくクレームを入れる人がいますが、これも犯罪に該当する可能性があります。
何罪に該当するかは電話の内容や電話の仕方、被害者がどのような損害を受けたのかによって変わってきますが、たとえばカスタマーサービスセンターに何度もしつこく電話をして脅しのようなクレームを入れたような場合は、業務妨害罪や脅迫罪などに該当する可能性があるでしょう。
近所トラブルがエスカレートした場合、嫌がらせに発展することが多いのですが、その際に気に入らない相手の自宅に行って車やバイクを傷つけるという行為に発展する場合があります。
このような嫌がらせは明らかに犯罪です。器物損壊罪に問われることはもちろんですが、車やバイクを傷つけるために敷地内に勝手に入ったとすれば住居侵入罪も問われることになるでしょう。
近年特に増えている嫌がらせ行為として、SNSやインターネット掲示板に誹謗中傷を書き込むというものが増えています。
SNSやインターネット掲示板は相手の顔や反応が見えませんし、嫌がらせを書き込む本人も匿名で投稿できてしまうため、誹謗中傷の書き込みが過激になってしまう傾向にあります。
誹謗中傷の内容にもよりますが、名誉毀損罪、侮辱罪、業務妨害罪などあらゆる犯罪に該当する可能性が出てきます。
職場環境はある種独特で、上司と部下の関係になるとどうしても力関係ができてしまうのでパワハラやセクハラなどの嫌がらせ行為が起こりやすくなってしまいます。
パワハラやセクハラは名誉毀損罪や侮辱罪、傷害罪、暴行罪などに該当する可能性があります。さらに、職場での行為となれば、会社からの責任追及も出てくる可能性があり、懲戒処分として降格されたり減給されたり、最悪の場合懲戒解雇でクビになってしまう恐れもあります。
自分のしてしまった嫌がらせで訴えられたらどうしよう?と不安になっている方もいらっしゃるかもしれませんが、「訴えられる」とは具体的にどのような状態を指すのでしょうか。
訴えられたらどうなってしまうのでしょう。ここでは、訴えられた場合に追及される責任について刑事上の責任、民事上の責任、職場での責任の3つにわけて考えていきます。
訴えられた場合に考えられるのが刑事上の責任を追及されることです。簡単に言えば警察に逮捕されてしまうということです。
警察に逮捕され起訴されてしまうと、刑事罰を受けるだけでなく「前科」が付くという大きなデメリットがあります。刑事罰とは具体的に【●年以下の懲役】や【●万円以下の罰金】などのことです。
ちなみに、逮捕されただけでは「前科」がつくことはありませんが、刑事事件の被疑者として捜査をされた記録(=「前歴」)がつくことは避けられません。たとえ不起訴になっても前科がつくことは避けられますが前歴が消えることはなく、仮に再度刑事事件の被疑者になってしまったら前歴が処分の判断材料になることもあります。
刑事責任の他にも民事責任を追及される場合もあります。嫌がらせ行為が名誉毀損罪や業務妨害罪などの刑事罰に該当しなかった場合でも、民事上で訴えられる可能性も十分にあるのです。
民事責任の追及として多いのが損害賠償請求や慰謝料請求です。
嫌がらせ行為によって売り上げが減少したり物が壊されたりした場合など実際に生じた損害について賠償する責任を追及されるのが損害賠償請求で、誹謗中傷などの嫌がらせで相手が精神的苦痛を受けた場合にそれに対して追及されるのが慰謝料請求です。
慰謝料請求された場合にいくら支払わなければならないのかは嫌がらせ行為の内容や相手が受けた被害によって変わってきます。
職場でのいじめやパワーハラスメントなど職場での嫌がらせ行為に対しては、刑事罰や民事罰よりも職場での責任を追及されることのほうが多いかもしれません。いわゆる懲戒処分です。
懲戒処分の内容は減給や出勤停止、降格、懲戒解雇など嫌がらせ行為の内容によってさまざまですが、懲戒処分を受けてしまうと職場の周りの人からの視線も気になってしまうでしょうし、その会社で働き続けることが精神的にも辛くなってしまうでしょう。
嫌がらせ行為の内容によっては、名誉毀損罪や業務妨害罪、住居侵入罪、器物損壊罪などの刑事事件として訴えられてしまう場合があります。
嫌がらせをしてしまい、訴えられるかもしれないと思っている方は「逮捕されたらどうなってしまうのだろう」と大きな不安に襲われると思います。
ここでは嫌がらせをしたことで逮捕されてしまった場合の一般的な流れを見ていきましょう。
刑事事件の被疑者として逮捕されたら、取調室に連れていかれ警察による取り調べが行われます。警察での取り調べは最長48時間と決められています。
この時間は家族であっても面会することはできません。
逮捕後の警察による取り調べが終わり、48時間以内に嫌疑が晴れなければ、検察へ送致されることになります。
検察官による取り調べは24時間以内と規定されていて、その時間に検察官は被疑者を起訴するか、不起訴にして釈放するか、勾留するかなどを判断します。
検察官が勾留すると判断し、裁判所が勾留を認めると最大で20日間身柄が拘束されることになります。勾留されると刑事施設などに身柄を拘束されてしまいます。検察官が被疑者を起訴した場合、刑事裁判によって有罪か無罪かの判決がくだされ、刑罰が決定します。
警察に逮捕されてしまうと家族や友人とはほぼ会えなくなり、弁護士としか話すことができなくなってしまいます。嫌がらせで訴えられそう、逮捕されるかもしれない、と感じたらできるだけ早く弁護士に相談するのが良いでしょう。
嫌がらせ行為に対して訴えられ、民事責任を追及された場合の多くが慰謝料請求されることになりますが、いったいいくらの慰謝料を支払わなければならないのでしょうか。
ここでは、嫌がらせ行為によって被害者の方が受けた精神的苦痛に対しての慰謝料について見ていきましょう。
どのような嫌がらせ行為に対して慰謝料が請求されるでしょう。まずは主な事例を確認してみましょう。
・ネット上での誹謗中傷の書き込みに対して慰謝料請求
・職場で繰り返しパワハラを受けていたことに対して慰謝料請求
・近隣から度重なる騒音の嫌がらせを受けていてうつ病を発症し慰謝料請求
・元恋人がストーカー化してしまい精神的苦痛を受けているため慰謝料請求
・上司から必要以上にプライベートの監視をされていることに対して慰謝料請求
このように様々なケースで嫌がらせに対しての慰謝料請求が行われています。
嫌がらせ行為を訴えられた場合、慰謝料の請求をされることがありますが、その金額は一概にいくらとは言い切れません。
精神的苦痛は目に見えるものではなく、明確に被害額を算出することは難しいので、これまでの裁判の判例を基に常識の範囲内で算出されていきます。
慰謝料の算定基準となる要因としては、
・嫌がらせ行為によって被害を受けている期間や頻度
・嫌がらせによって受けた被害の内容
・精神的苦痛の度合い(うつ病を発症した、など)
・嫌がらせをした加害者の社会的地位や支払い能力の度合い
・嫌がらせ行為に及んだ動機
・嫌がらせ行為をした後の加害者の対応(すぐに謝罪した、など)
・被害者に過失や責任はあるのか
などが挙げられます。
嫌がらせによる慰藉料金額の相場は、数十万円~高くても300万円程度と考えられます。数十万円~300万円となるとかなり幅が大きくなりますので、相場金額はあってないようなものです。
先ほどもお伝えしたように、精神的苦痛は目に見えませんし、人によって感じ方も異なるため、慰謝料金額の相場も大きな差ができてしまうのです。
あなたにとっては軽い気持ちで発言したことやネットに投稿したことでも、受け取る相手が変われば「傷ついた」とされ、慰謝料請求の対象になってしまい、金額にも影響してきます。
ただ、あまりにも法外な慰謝料金額を請求された場合、相手の言うままに支払う必要はありません。被害者もあなた自身も納得する金額にすり合わせられるよう相手としっかり交渉していくことが大切です。
嫌がらせをした本人は軽い気持ちで行ったことだったとしても、被害者の受け取り方によっては訴えられてしまう可能性があります。
では、罪に問われるような嫌がらせ行為をしてしまったら、どう対処していけばいいのでしょうか。
嫌がらせに対して被害者から訴えられそうだとわかったら、弁護士に相談するという対処法が考えられます。
弁護士に相談すれば、刑事事件と民事事件の両方を視野に入れた総合的な対応を期待できます。適切な方法で被害者に謝罪することで損害賠償請求の裁判を起こされるのを回避したり、被害者と交渉することで刑事告訴されるリスクを回避したり、法律の知識を使って効率よく守ってくれるでしょう。
また、もし万が一嫌がらせを訴えられて逮捕されたり勾留されたりしてしまった場合であっても、弁護士に依頼することで、捜査機関に意見書を提出するなどして、早期に釈放されるように対応を取ってもらえますので、早い段階で身柄を解放してもらえる可能性が高まります。
早期に身柄を解放されれば、職場や学校に逮捕の事実がバレにくくなりますので、日常生活への影響を少なく抑えられる可能性があります。
ただ、弁護士を雇うと弁護士費用がかなり高額になってしまうケースが多いので、どうしてもあまりお金をかけたくない場合や法的に訴えられるまでに時間的な猶予がある場合などは次の対処法も視野に入れてみるといいでしょう。
嫌がらせ行為を訴えられそうになった場合の対処法として、被害者と直接交渉を行う方法があります。
弁護士に依頼する場合も弁護士は被害者と交渉を行っていきますが、その交渉力を自分で身に付けて自分自身を守っていくのです。
自分自身で相手と交渉することで相手に反省の意をしっかりと示すことができますし、あなた自身も納得できる形で交渉を進めていくことができます。もちろん、交渉力は一朝一夕には身につくものではありませんが、プロからしっかりと交渉のテクニックを教われば、訴えられそうになっている事態を回避することも不可能ではありません。
交渉のテクニックについては、こちらの【問題解決のための交渉コンサルティング】のサイトもぜひ参考にしていただき、交渉のテクニックも学んでみてください。
相手を侮辱する手紙を送り付けたり、SNSで誹謗中傷をしたり、繰り返し脅しのような電話をかけたりなどの嫌がらせ行為は、している側は軽い気持ちであっても被害者から訴えられ、刑事罰に問われる可能性や慰謝料請求される対象となります。
嫌がらせ行為をしてしまい、相手から訴えられるかもしれないと思ったら、できるだけ早く相手と交渉するなり弁護士に相談するなり対策を取っていかなければなりません。
お一人で抱え込むことなく、ぜひ専門家の力を借りて問題を解決していってくださいね。